プロトピック軟膏の副作用でガンになる?客観的に検討してみた

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プロトピック軟膏(主成分:タクロリムス水和物)は、ステロイド外用薬と同等の抗炎症作用を持ちながら、ステロイド外用薬よりも副作用が少ないことが大きな特徴です。

ですから、例えば

顔面に皮膚炎が出てしまっているけれど、ステロイドの副作用で赤ら顔にはなりたくない・・・

といった場合には、ステロイド外用薬ではなくプロトピック軟膏を使うことで、紅潮・酒さ様皮膚炎のようなステロイドの副作用を回避することが出来ます。

 

このように、状況によってはとても便利なプロトピック軟膏ですが、

プロトピック軟膏を使うと、ガンになってしまいますよ!

のように、副作用としての発がん性が主張されることがあります。

アトピーが良くなっても、ガンになってしまったのでは本末転倒ですから、

プロトピック軟膏の発がん性が本当であれば、使えないことになります。

でも、お医者さんのほとんどは、「プロトピック軟膏に発ガン性は認められない」という主張に近い立場を取っています。

 

いったい、どちらの主張が正しいのでしょうか?

この記事では、

  • プロトピック軟膏には発がん性があるのか?ないのか?
  • 安全にプロトピック軟膏を使うには、どうすればいいのか?

という点について、出来るだけ客観的に検討してみたいと思います。

この記事を読むと次のことが分かります
  • プロトピック軟膏に発ガン性があるとされる根拠は?
  • 医師がプロトピック軟膏には発がんリスクは無いと言う理由は?
  • アトピー患者として、プロトピック軟膏とどのように付き合えばいいのか?

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1. プロトピック軟膏に発ガン性があると言われる理由

はじめに、

「プロトピック軟膏には発がん性がある」と主張する人達の根拠は何か?

という点について確認しておきたいと思います。

そもそも、プロトピック軟膏の添付文書を見てみると、その冒頭の「警告」の箇所に

〔警告〕
(中略)
マウス塗布がん原性試験において、高い血中濃度の持続に基づくリンパ腫の増加が認められている。また、本剤使用例において関連性は明らかではないが、リンパ腫、皮膚がんの発現が報告されている。

本剤の使用にあたっては、これらの情報を患者に対して説明し、理解したことを確認した上で使用すること。

引用元:『プロトピック軟膏0.1%添付文書』

のように記載されています。

つまり、

  • マウスでの動物実験でリンパ腫の増加が認められたこと
  • ヒトへの使用でも、リンパ腫・皮膚がんの発生の報告があること

の2点が、「プロトピック軟膏を使うと癌になる」という主張の根拠であるということです。

それでは、この2つの実験・報告について、その詳細を見てみましょう。

1-1. 動物実験で皮膚腫瘍・リンパ腫の増加が認められた

リンパ腫とは「血液のガン」の1種ですが、マウスを使った動物実験で、タクロリムス軟膏(製品名:プロトピック軟膏)を皮膚に塗布し続けると、リンパ腫の発生が増加することが分かっています。

このマウス実験については、製薬会社マルホ㈱HPのプロトピック軟膏インタビューフォームという文書で詳細が確認できます。

この文書から一部引用します↓

マウスの全体表面積の40%相当部位にタクロリムス軟膏0.03%、0.1%を2年間塗布した実験において、0.1%群で高い血中濃度の持続に基づく内臓のリンパ腫の増加が認められている。

引用元:『プロトピック軟膏インタビューフォーム』

このマウスを使った動物実験の結果から、

プロトピック軟膏を使うとリンパ腫になる危険性がある!

と言われることがあるわけです。

 

また、

タクロリムス軟膏をマウスに塗った上で紫外線を照射し続けると、塗らない場合に比べて皮膚がん発生の時期が早まる

ということも実験によって判明しています。

この実験結果があるため、プロトピック軟膏の使用上の注意では、

本剤使用時は日光への曝露を最小限にとどめること。また、日焼けランプ/紫外線ランプの使用を避けること。

引用元:『プロトピック軟膏添付文書』

という注意書きが記載されています。

この動物実験と使用上の注意の存在から、

プロトピック軟膏を使うと皮膚がんになる!

と言われているのです。

1-2. ヒトでも皮膚がん・リンパ腫発生の報告がある

タクロリムス軟膏の発がん性の指摘の根拠は、動物実験だけではありません。

ヒトにタクロリムス軟膏を使用した場合でも、「皮膚がんやリンパ腫が発現した」という臨床報告が存在します。

さらに、1件の研究(解析)では、「タクロリムス軟膏使用者は非使用者と比較してT 細胞性リンパ腫の発症頻度が高いと報告」されています。

これらの臨床報告・統計解析の結果も、「プロトピック軟膏には発がん性がある」という主張の根拠となっています。

以上のような動物実験結果・ヒトでの報告・解析結果の存在を考えると、「プロトピック軟膏を使うとガンになる」という主張には説得力を感じます。

でも、ほとんどの皮膚科医は「プロトピック軟膏の通常使用でガンやリンパ腫が発生することは無い」と考えています。

この考えも、そう考える理由を知るとかなり納得できるモノです。

2. プロトピック軟膏に発ガンリスクは無いと言われる理由

次は、「プロトピック軟膏には発がん性はないから、安心して使うことが出来る」と医師が考える理由・根拠は何なのか?についてです。

2-1. 動物実験の結果はそのままヒトに当てはめられない

タクロリムス軟膏の発がん性を示唆する動物実験には2つありました。

2年間塗り続けた場合のリンパ腫の発生増加」と「紫外線照射を続けた場合に皮膚がんの発生時期が早まること」の2つでした。

プロトピック軟膏の発がん性を否定する人達は、

これらの動物実験の結果は、ヒトにプロトピック軟膏を使った場合に発がんリスクを高めることを意味しない

という立場を取っています。

コレはどういうことなのでしょうか?具体的に見ていきましょう。

2-1-1. リンパ腫の増加はヒトでは起こらない

上で記載したように、プロトピック軟膏をマウスに塗るとリンパ腫の増加が認められますが、

その実験の条件をもう一度確認してみると、

  • 身体全体の皮膚の40%に相当する部分に
  • 2年間塗り続けた

という、通常のアトピー治療では考えにくい使い方をしていることが分かります。

このような「過剰塗布」をすると、タクロリムスの血液中濃度が異常に高まり、その結果として血液のガンであるリンパ腫の発生増加に繋がってしまうのです。

ですから、上で引用したプロトピック軟膏の添付文書でも、「高い血中濃度の持続に基づく内蔵のリンパ腫の増加」というように、

「高い血中濃度の持続」という部分をわざわざ付けているわけです。

アトピー治療でプロトピック軟膏を使う場合、用法用量を守った通常の使い方をする限り、

このような「高い血中濃度の持続」が起こらないことは、すでに実験により確認されています。

ですから、アトピー性皮膚炎の治療のためにプロトピック軟膏を使っても、リンパ腫の発生リスクは高まらない、と言われているのです。

2-1-2. プロトピック軟膏を塗って日光を浴びると皮膚がんになる?

プロトピック軟膏の発がん性を示すもう1つの動物実験は、「プロトピック軟膏を塗って紫外線を照射したマウスは、皮膚がんが発生する時期が早まる」というものでした。

この実験について、その条件をもう一度確認してみます。

アルビノ無毛マウスに40週間にわたりUVA及びUVBを照射し、その後12週間無処置期間を設けて観察すると試験動物のすべてに皮膚腫瘍が発生するが、

この試験系において紫外線照射と並行して本剤を塗布すると皮膚腫瘍の発生時期が早まることが示されている。

引用元:『プロトピック軟膏インタビューフォーム』

「アルビノ」というのは、遺伝的にメラニン色素が無く皮膚が白くなる特徴で、

アルビノのマウスは、メラニン色素がないために紫外線の影響をより強く受けてしまいます。

実験に使ったマウスは、このアルビノマウスでしかも体毛の無いタイプですから、さらに紫外線の悪影響を強く受けることになります。

このような紫外線に極度に弱い実験用のマウスに、40週間にわたって紫外線を浴びせ続けると、100%の確率で皮膚がんが発症してしまいます。

そして、このマウスにタクロリムス軟膏を塗布した場合、皮膚がんが発生する「時期」が早まるということが実験によって分かった、ということです。

 

この実験結果をもって、「タクロリムス軟膏を塗ると皮膚がんになる」と言うのは、かなり乱暴であると感じるのが通常の感覚ではないでしょうか。

実験はかなり極端な条件で行われており、しかもヒトではなくマウスを使った動物実験だからです。

この実験結果から言えることは、

タクロリムス軟膏を塗った皮膚を日光に過剰に晒すと、皮膚がんになる時期が早まるリスクがあるかもしれない

ということです。

ですから、プロトピック軟膏の使用上の注意として、「日光への曝露を最小限に留めること」という記載があるわけです。

 

ただ、この「日光に当たらない」という注意点についても、

実際には、「最小限に留める」というよりは「長時間日光に当たらない」という指導が行われることが通常です。

日光への気をつけ方としては、例えば、

(前略)紫外線の影響を考えて、強い日差しを避けてください。

といっても、日常生活では全く問題ありません。海水浴やスキーに行くときだけ、塗るのを控えればいいでしょう。

長時間にわたって屋外で日光を浴びなければ大丈夫です。

引用元:『専門医に聞く「新しい治療とクスリ」2 アトピー性皮膚炎』
p94 江藤隆史(著) 論創社

のような指導が行われています。

出来るだけ日光に当たらないようにしなければ!

という注意の仕方ではなくて、

海水浴やスキー、ゴルフ、屋外での部活動の練習など、長時間に渡って日光を受けるときには、患部に塗らない

という注意の仕方でOKということです。

 

このように、

動物実験の結果を根拠にして「プロトピック軟膏を使うとガンになる!」と言うのはちょっと無理があるのでは?

という意見に落ち着くのが、客観的なところではないでしょうか。

動物実験についての検討の次は、ヒトを対象とした臨床報告・解析結果についてです。

2-2. ヒトを対象とした研究のほとんどは発がん性を否定する結果

マウスなどの動物実験ではなく、実際にアトピー患者に対してプロトピック軟膏を使った場合に、皮膚がんやリンパ腫が発生したというケースが報告されています。

この点について、プロトピック軟膏の安全性を問題視しない立場の医師と製薬会社は、

  • 皮膚がん・リンパ腫の発生とタクロリムス軟膏の使用との間に、因果関係があるかどうかは不明。
  • 重症アトピー患者では、重症化したアトピー性皮膚炎自体がリンパ腫の原因となっているという指摘もある。
  • 国内外の9件中8件の研究で、タクロリムス軟膏が皮膚がんやリンパ腫の発症リスクを高めるエビデンスはないとの結果が報告されている。
  • 残る1件の研究は、調査方法などに問題があるため、タクロリムス軟膏がリンパ腫発症リスクを高めるとのエビデンス(証拠)にはならないことが、FDA(アメリカ食品医薬品局)から指摘されている。

のような事実から、「タクロリムスの発がん性を示すものではない」と主張しています。

参照元:『プロトピック軟膏添付文書』
『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン』

分かりやすくするために、この主張をかなり大ざっぱに言い換えると、

タクロリムス軟膏を使ったアトピー患者に皮膚がん・リンパ腫が発生したのは、タクロリムス軟膏と関係あるかどうか不明だから!

ほとんどの研究結果は、タクロリムス軟膏の発がん性を否定するものだし!

という感じの表現でも、間違ってはいないと思います。


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3. プロトピック軟膏は使うべきか?

ここまで、プロトピック軟膏の発がん性について、「発がん性ある側」と「発がん性無い側」の主張の根拠を見てきました。

どちらかと言うと、医師や製薬会社の主張の方が理にかなっているように感じるのは私だけではないはずです。

 

でも、

プロトピック軟膏を通常の範囲内で使う限り、発ガンリスクは無いですから、安心して塗って下さいねー

と医師に言われても、

特殊で極端な条件とはいえ、マウスの動物実験ではリンパ腫の増加が起こったわけですから、

タクロリムス軟膏の発ガン性は皆無!と言い切ることは出来ない

はずです(「発がん性」という言葉の定義にもよりますが)。

というか、タクロリムス軟膏を使わない場合に比べれば、ガンになりやすくなるのは間違いありません。

ここで重要なのは、「ガンになりやすくなる」程度が「無視できるレベル」であるということです。

3-1. プロトピック軟膏を使う・使わないは個人の判断

以上をまとめますと、

  • 理論的に言えば、プロトピック軟膏を使ってもガンになることはまず無い。
  • でも、使う立場からすると、皮膚に塗ることに不安を感じるのは確か。

となります。

完全に理詰めで考えれば、プロトピック軟膏は安全に使うことが出来ます。

でも、理屈では心配要らないことが分かっていても、心情的には不安に感じてしまいます。

このような状況では、プロトピック軟膏を使うか?使わないか?は、個人の判断になります。

つまり、「プロトピック軟膏を塗ってもガンにならない」という理屈を完全に受け入れ、使うことへの不安が小さいのであれば、使うことが出来ますし、

逆に、不安が大きいのであれば、その人はプロトピック軟膏を使えないはずです。

 

でも、無視できるとされる僅かなリスクを過度に不安がり、プロトピック軟膏を使わないことを選んだ場合には、

アトピー治療におけるプロトピック軟膏の利点・メリットを完全に放棄することになります。

3-2. プロトピック軟膏が必要となる状況とは

プロトピック軟膏では、ステロイド外用薬で起こることのある皮膚の副作用が、ほとんど起こらないとされています。

顔面や首は、他の部位に比べて皮膚が薄くてステロイド吸収率が高いために、ステロイド外用薬の副作用が起こりやすい場所です。

例えば、赤ら顔になってしまったり、赤い痛みのあるぼつぼつのある皮膚炎が出たりするのは、ステロイド外用薬の副作用です(ステロイド潮紅、酒さ様皮膚炎)。

このような副作用が出てしまった場合には、プロトピック軟膏に切り替えると、副作用の症状は無くなっていきます(ステロイド外用薬の使用を中止したため)。

また、副作用が出始める前に、ステロイド外用薬からプロトピック軟膏に切り替えることでも、

赤ら顔などのステロイド外用薬の副作用を回避することできます。

 

このように、プロトピック軟膏はステロイド外用薬に比べて皮膚への副作用がかなり少ないため、ステロイド外用薬の副作用を回避したい場合には、とても有効で便利なお薬なのです。

3-3. 不安な場合でも、見た目の気になる顔面に限って使うべき

ステロイド外用薬の副作用は、皮膚に現れる局所的な症状がほとんどです。

そして、顔面や首以外の部分に使う場合、皮膚の副作用は起こりにくいですし、仮に起こったとしても周囲からは見えませんので、そこまで気にならないはずです。

一方、顔面や首には副作用が起こりやすく、その症状は周囲からも明らかで容姿を損なってしまいますし、そのことが精神的なストレス・負担となって、アトピー性皮膚炎全体の悪化原因ともなり得ます。

皮膚に現れるステロイド外用薬の副作用のうち、皮膚萎縮線条という「妊娠線のように皮膚が割れる」症状は、ステロイド外用薬の使用を中止しても元に戻りません。

ただし、皮膚萎縮線条は、「強いステロイド外用薬を年単位の長期間使い続けた場合に起こる副作用」と言われていますから、十分な量のステロイドをきちんと塗って皮膚炎を綺麗にすれば(慢性化させなければ)この副作用は防げます。

このように考えますと、

  • 身体の皮膚炎はステロイド外用薬だけを使って綺麗に治す。
  • 顔や首の皮膚炎が慢性化したとき(しそうなとき)は、プロトピック軟膏に切り替えてステロイドの副作用を回避する。

という使い方は、プロトピック軟膏の発がん性に不安を感じてしまう場合であっても、取り入れることは出来るのではないかと思います。

顔面や首に限って使えば塗る面積は小さくなり、理論上は無視できるプロトピック軟膏の発がんリスクはさらに小さくなりますから、

プロトピック軟膏に不安を感じる場合でも、リスクを受け入れて使うことが出来るはずです。

4. まとめ

プロトピック軟膏(タクロリムス軟膏)の発がん性についてまとめますと、

  • プロトピック軟膏を使っても、皮膚がんやリンパ腫になることはまず無い。
  • ただ、プロトピック軟膏を使わない場合に比べれば、ガンになる危険性は僅かながら上がると考えられる。
  • 「僅かながら上がる」というのは、実際には無視できるレベル。
  • だから、理屈上はプロトピック軟膏は安心して使うことが出来る。
  • でも、使う立場からすれば心配になるのは仕方ないこと。

のようになります。

以上のことを知識として頭に入れた上で、不安を感じずに使えるのであれば、

ステロイド外用薬の副作用を回避するために、使用する部位を選ばずプロトピック軟膏を積極的に活用することが出来ます。

また、上述のように、プロトピック軟膏の発がん性について不安を覚える場合であっても

顔面に限り、ステロイドの副作用が出てしまうのを防ぐためにプロトピック軟膏に切り替える

という使い方であれば、許容できるのではないでしょうか。

それも無理!という場合には、ステロイド外用薬だけでアトピー治療を行うことになります。

その場合でも、スキンケアの徹底や悪化原因の特定・除去をきちんと行えば、アトピーを治す(コントロール下に置く)ことは十分に出来ます。

この記事がご参考になれば幸いです。


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