アトピー治療でステロイド内服薬は飲んではいけない重大な理由
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アトピー性皮膚炎の治療では、皮膚炎を綺麗にしてコントロールするためにステロイドを使います。
ステロイドには内服薬と外用薬がありますが、アトピー治療で使われるのは外用薬(塗り薬)の方です。
よほどのことが無い限り、皮膚科でステロイド内服薬が処方されることはありません。
ステロイド内服薬には皮膚炎を綺麗にする強い抗炎症作用がある一方、全身的な重い副作用を引き起こすため、クスリのベネフィットとリスクを比較すると圧倒的にリスクの方が大きくなるからです。
ですから、アトピー治療でステロイド内服薬が処方された場合、「本当にそのステロイド内服薬を飲むしかないのか?」という点を慎重に考える必要があります。
この記事では、
- ステロイド内服薬を飲むとどんな不都合が起こるのか?
- ステロイド内服薬がアトピー治療に不要な理由
- 私がステロイド内服薬を飲んだ時の体験談
をお話したいと思います。
- 1. ステロイド内服薬の重大な副作用
- 2. アトピー治療にステロイド内服薬が不要である理由
- 2-1. ステロイド外用薬だけで皮膚炎は綺麗になる
- 2-2. ステロイド内服薬を止めると「リバウンド」が起こる
- 2-3. ステロイド内服薬に精神的に依存する危険性がある
- 3. ステロイド内服薬を飲んだ私の体験談
- 4. ステロイド内服薬が処方された場合の対処法
- 5. まとめ
1. ステロイド内服薬の重大な副作用
ステロイドの塗り薬で現れる副作用は、皮膚や眼に現れる局所的なもので、そのほとんどはステロイド外用薬の使用を止めれば、症状が無くなる可逆的なものです。
このような副作用のリスクと、アトピーの皮膚炎を鎮める効能(ベネフィット)を比較すると、ベネフィットの方が大きくなるので、アトピー治療にはステロイド外用薬が用いられています。
一方、ステロイド内服薬の副作用には「全身的な重大な」ものが多くあります。
例えば、
- 副腎機能が低下する。
- 骨がもろくなる。
- 高血圧・糖尿病にかかりやすくなる。
- 肺炎などの感染症を発症しやすくなる。
- 顔が丸くなる(ムーンフェイス)。
- 成長を阻害する(身長が伸びなくなる)。
- 緑内障や白内障を引き起こす。
といった副作用です。
ステロイド内服薬を飲むと、ステロイド成分は血液に乗って全身に行き渡りますから、
その副作用も全身的で内科的な症状になってしまうのです。
これらのステロイド内服薬の副作用は、長期服用した場合に起こるものですが、
短期間の服用であっても、アトピー治療でステロイド内服薬を飲むのはやめた方がよいです。
その理由は後述します。
2. アトピー治療にステロイド内服薬が不要である理由
次に、ステロイド内服薬がアトピー治療に不要である理由をまとめてみたいと思います。
その理由は主に、
- ステロイド外用薬だけでも皮膚炎のコントロールは十分に可能だから。
- ステロイド内服薬には重大な副作用があるし、「リバウンド」が起こるから。
- ステロイド内服薬に精神的に依存する危険性があるから。
という3つです。
順番に見ていきましょう。
2-1. ステロイド外用薬だけで皮膚炎は綺麗になる
脱ステロイドに失敗して重症化してしまったアトピー患者であっても、
アトピー治療の専門皮膚科医による指導のもと、十分な強さのステロイド外用薬をきちんと塗れば、皮膚炎は綺麗に治るのが通常です。
また、もちろん、入院を必要としない日常生活を送れるレベルのアトピー性皮膚炎であれば、
ステロイド外用薬だけで皮膚炎はきちんと綺麗に鎮まります。
重篤なアトピー性皮膚炎の場合は、短期間(数週間~1ヶ月など)の入院治療を行い、
専門家(医師や看護師)に適切にステロイド外用薬を塗ってもらうことで、皮膚炎が無くなるまで肌は綺麗になります。
ステロイド内服薬を飲まなくても、ステロイド外用薬を適切に使えば皮膚炎はきちんと鎮まるのです。
確かに、ステロイド内服薬を処方して飲んでもらえば、1週間くらいで皮膚炎はかなり綺麗になりますから、その方が手っ取り早く簡単です。
ですが、ステロイド外用薬でも皮膚炎を鎮めることが出来る以上、手間暇とお金がある程度かかるとはいえ、ステロイド外用薬の使用を優先すべきです。
つまり、ステロイド内服薬はアトピー性皮膚炎治療の「最後の手段」であるということです。
2-2. ステロイド内服薬を止めると「リバウンド」が起こる
ステロイド内服薬には、成長阻害・骨がもろくなる・糖尿病といった重い副作用のリスクがあります。
このような重大な副作用の存在を考えるだけでも、アトピー治療にステロイド内服薬を使うべきではないという結論になるのですが、
もしかしたら、
短期間だけ飲む分には、ステロイド内服薬を使ってもOKでしょ。
と考えてしまうかもしれません。
塗る量や塗り方に気をつけながらきちんとステロイド軟膏を塗るのは面倒ですし、ステロイドの錠剤を食後に飲むだけで皮膚炎が綺麗に治るのであれば、そっちの方が圧倒的に手っ取り早いからです。
でも、たとえ1週間などの短期間であっても、アトピー治療でステロイドを飲むのはいけません。
なぜなら、皮膚炎が綺麗になってステロイド内服薬を飲むのを止めた途端に、皮膚炎が急激に再燃するという、いわゆる「リバウンド」が起こるからです。
ここから、ステロイドのリバウンドについて、少し詳しくお話したいと思います。
まずは、ステロイド外用薬のリバウンドについてです。
悪質なアトピービジネス業者は
ステロイドを塗るのを止めると、リバウンドが起こってアトピーは重症化します!
というように、ステロイド外用薬で「リバウンド」が起こるとしてアトピー患者のステロイドへの不安を煽ることがあります。
しかし、ステロイドのリバウンドは、外用薬では起こりません。
ステロイド外用薬の使用を止めたとたんに皮膚炎が急激に悪化してしまうのは、皮膚の下に炎症がまだ残っている状態でステロイド外用薬を止めてしまうからです。
つまり、「やめ時」が早過ぎることが皮膚炎再燃の原因であって、ステロイド外用薬の使用中止がその原因ではありません。
一方、ステロイド内服薬では、クスリの仕組みとして、内服中止時に「リバウンド」が起こることが知られています。
この点について、アトピー治療の専門書から引用します↓
ステロイドをのんでいる間は、体の副腎は、つくるのをセーブして休止しています。それを急にやめると、からだに必要な副腎皮質ホルモンが足りなくなり、症状がぶり返して、悪化したりすることがあります。
(中略)
これが本物の「リバウンド」で、内服のステロイドを減らすときは、少しずつ時間をかけるのが原則なのです。急にやめたりはしません。
ステロイドは、服用するのと、皮膚に塗るのとでは、副作用の出かたが天と地ほど違うクスリです。
(中略)
ステロイド外用薬は、どんな強いランクのものであっても、血液中にごくごく少量しか入らないことが、多くの研究結果から明らかになっています。
非常に強いステロイドを、常識はずれの量を使わないかぎり、副腎機能を抑えることで起こる本物の「リバウンド」は起こしません。
引用元:『専門医に聞く「新しい治療とクスリ」2 アトピー性皮膚炎』p70,71
江藤隆史(著) 論創社
このように、ステロイド内服薬を短期間使う場合であっても、その止め方に注意しないとリバウンドを引き起こして、皮膚炎が再び悪化してしまうことになります。
このステロイド内服薬のリバウンドは、私も実際に体験してしまいましたが、かなり辛いものです(詳しくは後述します)。
2-3. ステロイド内服薬に精神的に依存する危険性がある
ステロイド外用薬とステロイド内服薬には、その効果の強さや副作用の大きさ以外にも、大きな違いがもう1つあります。
それは、クスリの使用方法の難易度です。
ステロイド内服薬は、食後に錠剤を飲んだら、それだけで終わりです。
一方、ステロイド外用薬を使う場合には、
入浴・シャワーで皮膚を清潔にしてから、必要な量をおおまかに量ってチューブから軟膏を出して、それを炎症・湿疹部分に載せるように丁寧に塗っていきます。
強さの異なるステロイド外用薬がある場合には、塗る順番も守らなくてはなりません。
しかも、塗った後は、ベタベタして少し気持ち悪いです。
皮膚炎が酷い時には、この作業を1日2回、毎日繰り返します。
ステロイド外用薬をきちんと使うためには、ある程度の知識や経験が必要となりますし、そして何よりも面倒くさいです。
このように、ステロイド外用薬とステロイド内服薬では、圧倒的にステロイド内服薬の方が簡単に皮膚炎が綺麗になるのです。
「錠剤を飲むだけで皮膚炎が綺麗になる」ということを体験してしまうと、ステロイド外用薬を使うのはかなり面倒に感じてしまいます。
また、アトピー性皮膚炎悪化に繋がるような「不摂生」をしても、ステロイドの錠剤を飲めば短期間で皮膚炎が綺麗に治るのですから、
アトピー性皮膚炎を本当の意味で治すための、生活改善をしようとしなくなります。
このように、ステロイド内服薬には、精神的に依存してしまうリスクがあると私は考えます。
精神的に依存してしまえば、気付いてみればステロイド内服薬の長期連用に繋がり、重大な副作用を引き起こすことになりかねません。
3. ステロイド内服薬を飲んだ私の体験談
私は、大学受験の浪人生時代に、睡眠不足とストレスのせいか、アトピー性皮膚炎が酷い状態がほぼ1年間続いていました。
宅浪で受験勉強をしていて、予備校には週1回顔を出す程度で人に会う機会もほとんどなく、アトピーが酷くてもあまり気にしていませんでした。
でも、大学入学をきっかけに「アトピーを綺麗にしなきゃ」と思い立ち、近所で評判の開業医の皮膚科に行きました。
そこで、院長先生のお爺さん先生に、ステロイド内服薬をサクッと処方されてしまったのです。
当時の私は、アトピー性皮膚炎に関する知識がほとんどありませんでしたので、言われるがままに1,2週間くらい毎日飲みました。
すると、みるみるうちに皮膚炎が綺麗になったのです。見た目にも、「実は昔、アトピーだったんですよー」と言えるくらいになったので、嬉しかったのを覚えています。
そうして、2回目の診察に向かうと、その日は院長先生ではなくて息子の先生が診察してくれましたが、
その先生は私のカルテを読むと、少しの間沈黙し、
お薬は変えますね。きちんと軟膏を塗って下さい。次からは、○曜日に来るようにして下さい。
と言われ、その日の診察は終了。
ステロイド内服薬は処方されなかったため、自然とその日から中止することに。
すると、次の日あたりから皮膚炎が再び現れるようになり、しばらく経つとかなり悪い状態になってしまいました。
後になって知ったのですが、その皮膚医院が評判だったのは息子先生の方で、院長先生のお爺さんの方ではなかったのです。
お爺さん先生は私の皮膚炎の状態を診て、安易にステロイド内服薬を処方してしまったのですが、
次の息子先生の診察で、その誤りに気づき、ステロイド内服薬の処方を止めて外用薬に切り替えたのだと思います。
「次回から○曜日に来て下さい」と言ってきたのは、院長先生の診察に当たらないようにするためです。
つまり、その皮膚科では医師によって治療方針が全く異なっていたのです。
今考えると、息子先生がステロイド内服薬の処方をスパっと止めたことが、ステロイド内服薬の「リバウンド」を引き起こしたのだと思います。
実際、2回目の診察のあと、急激に私のアトピー性皮膚炎の状態は悪化してしまいましたので。
私の場合は、運良く?ステロイド内服薬の使用期間は比較的短期間になりましたが、
安易にステロイド内服薬を処方する医師というのは、確かに存在します。
私のように、無用なリバウンドを経験しないためにも、重大な副作用を体に起こさないためにも、
ステロイド内服薬が処方されてしまった場合には、より慎重に対処することが必要です。
4. ステロイド内服薬が処方された場合の対処法
アトピー性皮膚炎の治療にステロイド内服薬が本当に必要なケースは、極めて稀です。
例えば、脱ステロイドによるアトピー治療を長期間行うと、アトピー性皮膚炎が重症化するだけでなく、全身の皮膚に細菌感染が起こることがあります。
この細菌感染の種類によっては、危篤状態になったり、死亡してしまう例もあります。
このような特殊なケースでは、ステロイド内服薬の処方が必要となる可能性があります。
ステロイド内服薬で短期間に皮膚炎を鎮めないと、生命に関わるからです。
しかし、このような特殊な例を除いて、重症化したアトピー性皮膚炎であっても、ステロイド外用薬が優先して使われることは間違いありません。
ですから、皮膚科に行ってステロイド内服薬が処方された場合には、
本当にステロイド内服薬を飲まないと皮膚炎をコントロールできないのか?
という点について、確認する必要があります。
具体的には、
- ステロイド内服薬を処方した医師に、その根拠を詳しく聞く。
- すぐに別の皮膚科医の診察を受け、セカンド・オピニオンを貰う。
という対処を取りましょう。
特に、別の皮膚科医に皮膚炎の状態を診てもらって、「ステロイド内服薬は本当に必要ですか?」と聞くことは、安全なアトピー治療のためには必要不可欠です。
その医師が、セカンド・オピニオンとして「ステロイド内服薬ではなく外用薬だけで十分」と判断すれば、ひとまずはその皮膚科医にかかりつけ医を変えた方が無難です。
このように、
アトピー治療目的のステロイド内服薬については、「処方されたから飲む」ではなく、必ずセカンド・オピニオンを得る
ことをおすすめします。
ちなみにこれは、私の私見などではなく、多くの皮膚科医に共通する認識です↓
また、これは強調しておきたいことですが、アトピー専門医が悪化した患者に、治療として、ステロイドの内服薬や注射を奨めることは、まずありません。
そのような場合には、入院してもらって外用薬で治療するのが、多くの専門医の治療方針です。
内服したときや注射したときの副作用を知っているからです。
引用元:同上 p76
5. まとめ
経験の浅い皮膚科医、アトピー専門ではない皮膚科医、知識のアップデートが出来ていない皮膚科医の一部には、アトピー治療のために安易にステロイド内服薬を処方する医師がいます。
また、脱ステロイドを推奨し、ステロイドを塗らないで体質改善等によるアトピー治療を実践している医師の中には、
アトピーが重症化して「手に負えなくなった」段階で、ステロイド内服薬を処方してしまう
モラルの無い医師もいるそうです。
取り返しの付かないコトにならないためにも、アトピー治療のためにステロイド内服薬が処方された場合には、
本当にステロイド内服薬しか選択肢がないのか?
を慎重に確認することが大切です。
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